皆さんは、小学校から中学、高校、大学などで不動産について授業を受けたことがあるでしょうか?
少なからず、私はありません。
このコラムでは、私が機構を立ち上げたいと志した要因やさまざまな問題に対する所感を掲載していきたいと思います。
「人に迷惑をかけない」はずが…? 不動産が生むトラブルの現実
子供のころから、親や学校の先生たち、大人たちに、「人に迷惑をかけてはいけません」、「人には親切にするものです」と教えられました。そして自分たちが大人になった今、子供たちに同じことを教えています。しかし、ごく一部の人達かもしれませんが、こと不動産に於いては平気で他人に対して迷惑をかけていると感じます。
以前、自分の敷地から伸びている木の枝が道路に大きくせり出し、通行する人や自動車に大変迷惑をかけているという報道をみました。インタビューに答えた土地所有者は、「自分の敷地と道路(公道)の境界が決まらないから、道に伸びた枝は切らない。悪いのは役所だ」と主張していました。所有者は通行人や、自動車に対して平気で迷惑をかけていることは気にならないのでしょうか。自分の主張を通すためには、“他人に迷惑をかけても平気である”というような話をしていたことが、大変印象的でした。もっともこのような問題は行政側の怠慢で解決を先延ばししているのも否めません。
私の住む地域には、おそらく20年以上前から空き家になっている家があります。木や草は伸び放題で、隣地や道路に大きくせり出しています。荒れ果てた庭から虫が大量に発生し、隣人は困り果てています。当時、越境している枝や木は簡単に切ることができず、役所に相談しても個人情報の保護という理由で隣人の連絡先は教えてもらえませんでした。役所は所有者に対し管理等を促していると言っていますが実態はわからず、放置しているという状況にも見えます。建物も一部崩壊していて不気味な状態です。隣人の気持ちを考えるといたたまれない気持ちになりますが、このような出来事は決して他人ごとではない感じがします。
不動産教育の欠如が招く社会問題とは?
個人もしくは家庭においての資産の約6割~7割は不動産といわれています。
この大事な不動産という資産、財産について教育がされていないというのはいかがなものかと考えるところです。当然、不動産を持つ人、持たない人、さまざまな方がいると思います。持たない人から見れば関心がないのは当たり前かと思いますが、所有するのであれば、最低限の知識は必要です。実際、不動産は大きな経済効果や、国の財源になっていますが、多くのトラブルや、様々な事件、事故、犯罪を招く側面も持っています。更には相続が発生した後に、身内同士で骨肉の争いが起きていることも多々あります。また、近年社会問題化している、空き家問題や、登記未了不動産、未管理不動産が原因で、近隣や地域においてトラブルが発生したり、経済の停滞や、災害等を引き起こす要因となっていることも忘れてはいけない事かと思われます。
このような問題が起きてしまう背景には、大きく二つの要因があると考えます。
一つめは、不動産所有者が“不動産”について基礎的な知識を持っていないことです。正しい知識の欠如によって自分本位な偏った考えとなり、非常識な判断や問題行動が発生します。
もう一つは、不動産における道徳心やモラルの教育が不十分なことです。不動産を所有することで、「社会的・人間的に大きな責任が発生する」という自覚を持っていないが為に、他人を巻き込む様な多くの現象が起き、社会問題になっているのではないでしょうか。道徳やモラルなどの教育に“偏り”があることも一因だと考えています。要は個々人のモラルや考え方の違いによって起きているものだと思います。
これらの問題を解消すべく国も様々な法律や、制度をつくりながら動いていますが、どの程度の効果があるのかはまだまだ未知数です。